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『La Sal de la Tierra』写真家セバスチャン・サルガドを追う、ヴィム・ヴェンダース監督のドキュメンタリー

先日、ムスメ誕生直後の乳幼児集中治療室で、それこそ命の恩人とも言えるほどお世話になった作業療法士さんと再会しました。8年ぶりに話をしてみたら、なんと近年ジャーナリストになるために勉強していたそうで、先日遂に卒業し、プロのカメラマンとしてのライセンスも取得したとのことでびっくり。今年中にはシリアを始め、いくつかの国へ取材旅行に行くつもりだと熱く語られ、経験を積んで安定しているはずの今の仕事を辞めてまで、報道カメラマンの世界へ飛び込んで行こうとする彼の情熱に驚かされました。

そんな彼に絶対に見て欲しいと言われたドキュメンタリー、『La Sal de la Tierra』(邦題は『セバスチャン・サルガド〜地球へのラブレター』)が圧巻の凄さだったのでご紹介します。名匠ヴィム・ヴェンダース監督が、今世紀最も重要なカメラマンの1人と言われるブラジル人報道カメラマンのセバスチャン・サルガドの生涯を、彼のインパクトある写真の数々を紹介しながら紐解いていくもので、2014年のカンヌ国際映画祭で上映されて以降、世界中で多くの賞を受賞した作品です。

もともとエコノミストだったセバスチャンが、いかにして報道カメラマンとしての道を見出し、その過酷な道を突き進んで行ったのかが語られ、1972年のエチオピア飢饉(1万人が死亡)、1984年の更なるエチオピアの大飢饉(100万人が死亡)、1991年のクエート、1994年に始まった20世紀最大の悲劇と言われるルワンダ大虐殺などの現場に長期間滞在し撮影を続けて行った彼が、人類の歴史を追って行く中で魂が壊れていくさまが、衝撃的なモノクロ写真を通じて見えてきます。

その救済としてセバスチャンが最終的にたどり着いた所はどこだったのか。被写体は何だったのか。彼の力強い写真の数々に圧倒されることは間違いありませんが、この映画を決定的に素晴らしいものにしているのは、ラスト30分の展開です。その結末が遥かに想像を超えたスケールだったため、見終えた時には言葉を失ってしまい、数日経った今もまだ感動で魂が震えているほどです。

人類は、地球上で最も暴力的で残酷で、地球のためにならない生き物なのだと言うことを、きっと私たちは覚えておく必要があるでしょう。だから、この作品は全人類に見て欲しい。DVDも出ています。

公式サイト:http://salgado-movie.com/about/

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