アルゼンチン暮らしIROIRO

アルゼンチン在住ライターの日々の想いイロイロ

スター誕生!

我が家のセドリック6歳が、映画『ビリー・エリオット』に影響を受けてクラシックバレエを始めたのは8ヶ月前のこと。ラテン度のあまり高くないここアルゼンチンでもやはり男性は比較的マッチョなわけで、「男のくせにクラシックバレエだってぇ~!」とバカにされることを恐れながら、学校のお友達には内緒にしたまま、それでもとっても熱心にクラスへ通っていました。

85年の歴史を持つ由緒正しいそのバレエ学校は、我が町の市役所が開催していて、遅刻した児童はクラスに入れなかったり、親がレッスンを軽々しく見ることができないようになっていたりと、なかなか厳格な教育を推進しています。

そしてなんと言っても素晴らしいのは、授業料無料という制度。このおかげで、貧しい地区の子供達も経済的な負担を負わずに自由に通え、クラスの中には社会階層の異なる子供たちが肩を並べてレッスンに励む環境が生まれているようです。

さて、そんなバレエ学校の年末発表会が昨日、市内で最も権威ある劇場で行われ、セドリックも初出演することに!あらかじめピカ(セドリックのママ)が押さえてくれた席は、一階の最前列2席と4階の最前列3席の計5席(1階席は各家族2席までしか買えない制度だったので)。当初は一階の席にピカとそのパートナー、4階の席に私とダーリンとダーリンのお母さんが座ることになっていたのですが、私のお腹が大きくて4階まで階段を上がらせるわけには・・・と言うことで、結局私とダーリンに1階最前列を譲ってくれたのでした。

20時開演のはずが、ばっちりアルゼンチン時間で21時近くにようやく校長先生による舞台挨拶が始まり、それによると、現在同学校の生徒総数300人(!!)とのこと。そして我が家のセドリックはなんと、その中で唯一の男の子にして、クラス最年少。発表会の舞台はつまり、299人の女の子とセドリックという・・・何ともハーレムなことになっていたのでした(バレエ学校が好きなはずだよ・・・笑)。

作品の内容は海の中の世界をモチーフとして、年齢で分けられたクラスごとに、熱帯魚や人魚、海の波の動きや貝殻などを表現していくというもの。衣装もなかなか素敵なデザインで、小さい子供たちの踊りも微笑ましく、私のお腹ではムスメちゃんも興奮気味に激しく動いていました。

そもそもバレエと言えば・・・私も子供のころ習いたいぃいぃ~~と親に訴えたものの、「授業料が高くて通わせられない。バレー(ボール)で勘弁して」と、地区のバレーチームに放り込まれたことを思い出す・・・。ああ、あの時バレエを始めていたならば、きっと今頃プリマドンナになっていたに違いない・・・なんて、ややほろ苦い想い出を胸に舞台を眺めること数10分。

遂にセドリックがステージ横に立つ姿が見えて、録画係を買って出ていた私はあわてて録画開始!!!そして勇ましく剣を掲げたセドリックが、ソードフィッシュの役で舞台へ飛び出して来たその瞬間、、、なんと劇場中から割れんばかりの拍手が!!!300人近い少女たちの中で、ひときわ小さい唯一の男の子の登場に、客席からは「あら~~~~~~~(可愛いわね~~~)」という声が上がり、喝采が送られたのでした。

それはまさしく、スター誕生の瞬間!!!

それにしても、自分の振付に自信がない女の子達が、お互いの踊りを目でちらちらと盗み見ながら必死で踊っている前で、セドリックは緊張した様子も、振付に迷う様子も微塵もナシ!!なんでそんなに堂々としてるの???って不思議になるぐらい、見事に自信満々な踊りっぷりに、上手下手はさておいて、もう感心するやら感動するやら・・・。

実は私に至っては、セドリックがその小さな体を舞台に見せた瞬間から涙が止まらなくなってしまって(超予想外!)、もう感動して感動して泣きながら録画してました。はは・・・

舞台が始まる前には、「まあ、実の子の発表会でもないし、そんなに興奮もしないわね~」なーんて思っていただけに、自分のこのリアクションには、自分でも相当な驚きが(苦笑)。とにかく、飛び跳ねるセドリックを見たら胸がいっぱいになってしまって、なんと言うか・・・自分の意志で選んで、周囲にひた隠しにして通ったバレエ。そしてその晴れ姿を見て、あ~~~~な~んか良かったなぁ~~って胸が熱くなってしまったのでした。

公演が終わり、興奮冷めやらぬセドリックとダーリンと私が家に着いたのはもう夜中の23時。それから大急ぎで簡単な夕食を作り、どうしても折り紙がしたいというセドリックに付き合って一つだけ折り紙を折り、短いお話をダーリンが読み聞かせ、寝かしつけたのは24時過ぎ。さすがにセドリックも疲れてぐったりしていたけれど、今宵の感動を胸に安らかな顔をしてコトンと眠りに落ちました。

彼にはこれからも夢を持って、他人と違っても、なかなか理解してもらえなくても、本当に好きなことを続けていって欲しいなぁ~・・・なんて、母さんちっくなことを思ってしまった私。頑張っているセドリックを誇りに思い、パワーをもらった素敵な夜となりました。