アルゼンチン暮らしIROIRO

アルゼンチン在住ライターの日々の想いイロイロ

新年のご挨拶&手術報告

すっかり遅くなりましたが、あけましておめでとうございます

早速ご報告ですが、先日7日、2度も延期になっていたムスメの胃ろう手術が無事行われ、5泊6日の入院を経て今週水曜日に退院となりました。

そんな訳で年明けからすっかりバタバタしていて、私が送った一斉メールでの年賀状へ、ご丁寧に返信くださった方にお返事を書きたいと思いつつ、なかなか時間が取れないでいます。手術&入院後のムスメがすっかり抱っこ抱っこちゃんになっていることもあり、PCの前に座る時間が全然ない!!!また追々チャンスを見つけてお返事しますので、待っていてください。

さて、丸一年間もの間、口から胃にカテーテルを通されていた可哀想なムスメでしたが、今回の手術のおかげでようやくその苦痛を取り除いてあげることができました。私としてはまだお腹から飛び出たチューブに慣れずにいますし、チューブを通された傷跡も痛々しく、毎日の消毒の時には可哀想になりますが、それでもミルクを直接胃に流せるので食事時間が15分程度と相当短縮された喜びは尽きません。

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サナトリオにて手術待機中。

これまでは口のカテーテルを通じて授乳用の機械でミルクを飲ませていたため非常に時間がかかり、一日の大半は機械に繋がれ身動きの取れなかったムスメでしたが、これでようやく遊んだり体操したりお外にちょこっと出かけたりする時間が自由に取れるようになりました。授乳回数も普通の子供同様、朝ご飯、昼ごはん、おやつ、夕飯と4回だけに減り、生活のリズムも作りやすくなりました。

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手術後3日目、病室にて。いきなり元気でした。

お口が自由になったので今後は嚥下の訓練を開始し、飲み込んだ物が気管へ入らないようになったら、胃ろうを閉じてお口から普通にご飯が食べられるようになると言われています。まだまだ何ヶ月もかかることになるとは思いますが、まずは第一歩を踏み出せたと言えそうで、ダーリン共々ほっと肩の力を抜くことができました。

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カテーテルが取れてお顔もすっきり。本人も楽になったようです。

ムスメに寄り添って生きて行くということは、こうして1ミリずつ前進して行くということなんですねぇ・・・。「忍耐」という言葉とは無縁だった私ですが、この世の中にはやる気とか努力とかだけではどうにもならないことがあって、そこはまさに「忍耐」でしのがないといけない。昨年1年間でこの言葉の意味と重みを身に染みて理解できたがします。

また昨年を振り返ってみると、自分とか自我とかいうものをこれほどまでに棚上げにして生きた時間はこれまでなかったな、と気付きます。何しろ、難しいムスメの面倒を見てとお願い出来る人がいないため、産後、私自身の心も体もケアできずにここまで来ました。

そんな無理が祟って、年末には腰痛に始まり、遂には足を床につけないほど左足の付け根が痛むようになり、慌ててカイロプラクティスへ飛び込む羽目に・・・。産後のエコーや血液検査もな~んにもできないまま1年間が経ってしまって、ちょっと自分でも自分が心配になってきました。だってもう若くないのに~。

ということで、今年はもう少し自分のことも大事にしてあげようと、反省も込めて思っています。私が倒れてしまったらムスメもきっと倒れちゃう。自分ケアはひいてはムスメのため、家族のためでもあるのだと気付き、どうにかして時間を作らないとと考えています。

それともう一つ。

実は18歳のルーカス(ダーリンの弟)を見ていて、最近思うところがありました。お勉強好きのダーリンと全く似ても似つかないルーカス君。高校卒業をめぐって実は昨年だいぶ苦労しました。通っていた高校はこの町でも一応名門と言われる学校でしたが、彼は在学中ずっとぎりぎりの成績でクリアしてきました。ところが最終学年になって、どうしても1つだけクリアできない科目が出来てしまったのです。

追試に次ぐ追試でも合格点に達せず、遂には卒業認定の期日に間に合わない事態に陥ってしまいました。最終的には合格・卒業にこぎつけたものの、本来ならば昨年3月から入学できたはずの大学への進学は1年待たなければならないことになり、昨年1年間をほぼ棒に振る結果となりました。

この「何もできない1年間」をどうするのかと家族中から問い詰められ、暗い顔をしていた彼。ちょこっと仕事を始めてみても続かず、結局落ちこぼれ仲間と週末ディスコへ通うぐらいしかアクティビティもなく、果てはセドリックにまでそれを指摘されると言うなんとも情けないことになっていました。

ところが、そんな彼がある日私に言ったのです。「カヤックを買おうと思う」と。この町には大きな川が流れていて、川沿いを歩いているとカヤックに乗った人たちをよく見かけます。彼も以前からそんな人々の姿を目にしてカヤックの存在を気にしていたよう。何がきっかけになったのかは定かではありませんが、ある日持っていたエレキギターを売却し、そのお金で本当にカヤックを購入したのです。

同時に、赤十字が主催するライフセーバーの資格を取りたいと言い出し、水泳にも通うように。これまで、夜遊びして朝帰りし、昼過ぎまで寝ていた彼の生活が、こうしたいくつかの健康的な目標のためにがらりと変わりました。週に3日は水泳へ通い、週末にはカヤックのクラスへ行って真黒に日焼けし、体つきもたくましくなりました。カヤックのクラスではだいぶ年上の社会人に囲まれているそうで、そんな影響もあってか態度もしっかりしてきました。

そして何より、やりたいこと、好きなこと、打ち込めることを自分の力で見つけたという自信が、顔つきにも表れるようになったのです。そんな彼の変貌ぶりを間近で見ていて改めて思ったのです。人間、これだ!と思えるものを持っていることで成長するんだ、って。

実は、これは私の永遠のテーマでもありました。色々と好きなことはあるし、割と面白い人生を送ってきたような気もしますが、やはり私には「これをやるために生まれたのだ」と思えるような何かがまだ見つかっていない。人生の中で何度か「これかも」と思うことはあって、その都度がむしゃらに頑張って何らかの形にはしてきたけれど、でもどれも決定打にはならなかった気がします。

その「これぞ!」という何かを見つけたい、見つけて無我夢中で頑張ってみたいという想いを抱えながら、ここ10年間ぐらいは迷い迷って生きてきました。昨年はムスメのことで必死で、本当に自分のことを省みる余裕も時間もありませんでしたが、会うごとに大きく変わっていくルーカスを見ていて、今年こそ自分の打ち込める何かを探すことに力を入れよう、と決意を新たにしました。

そして、この先長い人生の中でムスメが打ち込める何かを探していくのを、しっかり見守ってあげようとも。体に不自由があるムスメなので、もしかしたらそのプロセスは健常な私たちよりもずっと難しいかもしれません。だから私はこの子のそばで、そっとサポートしてあげようと。いつかムスメが「これが私の道だ」と思えるものに出会えて、その顔が今のルーカスのように輝くまで。

こんな私とムスメのよちよち歩きですが、どうぞ本年も温かく見守ってやってください。