アルゼンチン暮らしIROIRO

アルゼンチン在住ライターの日々の想いイロイロ

夢の光景

先日我が家の猫君が2階の窓から飛び降りるという衝撃的な事件が起きました[emoji:e-329]。ムスメ誕生後、あまり構ってあげられていなかったため、自殺だったんじゃ?なんてダーリンには散々からかわれましたが、もちろん違います。

15歳になろうとしている猫君、最近では屋上に上がるたびに近所のやんちゃな若造猫に闘いを挑まれ、逃げ帰ってくる始末で、かつての喧嘩王の面影はすっかり薄れていました。そんな彼の憩いの場は、寝室の窓辺。ここのところ、窓の柵の外の狭いスペースに体を横たえ、じっと通りを見降ろす姿が定着していました。とはいえ我が家は2階。何かの拍子に落っこちそうで、正直見ていてちょっとひやひやしていたのですが・・・。

ある朝、私がムスメとベッドの上で遊んでいると、背後の窓辺からがりがりっと何かをひっかく音がしたのです。振り返ってみると、さっきまでそこに寝そべっていた猫君が・・・い・な・い!!「え~~~~っ!」[emoji:e-330]窓から身を乗り出してみると、そこにはなんとも不思議な光景が広がっていました。

まず真っ先に私の目に飛び込んできたのは、綺麗な緑色の体に陽を受けて虹色に輝くハチドリの姿でした。その小さな妖精は、羽をぶ~んと羽ばたかせ、窓のすぐ傍で空中静止していました。そしてそのず~っと下の歩道には、我が家の猫君が上を見上げて情けない顔でにゃーにゃーと鳴いている姿が・・・!

それはなんともシュールな夢の光景のようでした。ま、何が起こったのかは一瞬にして分かりましたが。

普段からこの窓辺を多くの鳥たちが横切っていますが、さすがにそれには手が出せないと分かっていた猫君。でもハチドリって空中静止できるんですよね。それできっと「こいつならいける・・・[emoji:e-287]」と手を出したのでしょう。もちろんそれは大いなる勘違いで伸ばした手は届かず、そのままど~んと落下となったようです。

アルゼンチンに来てから一切外に出していなかったため、一番びびったのはきっと猫君自身でした。私が大慌てで階段を駆け下り歩道へ飛び出してみると、ニャアニャアと甲高い声を上げながら、相当な及び腰でヘロヘロと大通りへ向かって歩いて行く後ろ姿がありました。

そっと近付いて背後からあっさり捕獲できましたが、笑ったのが2軒先のご近所のおばあさん。頭にカーラーを巻いたままのネグリジェ姿で玄関口に立っていた彼女は、「猫が空から降ってきたのじゃぁ~~~」とわなわな状態。「ごめんなさいね~」と急ぎ退散した次第です。

幸い猫君の老体には怪我ひとつなく、お部屋に抱いて戻った途端、私の腕をばりっと引っ掻く余裕さえありました()。でもこの事件後には甘えん坊が炸裂し、この11ヶ月間分甘えさせてよと言わんばかりにすり寄ってくるように。そんな態度を見て、あ~~~なんか寂しい思いさせていたよね、と私もちょっと反省・・・。最近ではどんなに忙しくても時折ゴロっと一緒に横になって、思い切りぐりぐりしてあげることにしました。

この事件以来、彼の憩いの場は同じ窓辺でも柵の内側と窓ガラスの狭~い隙間となり、その窮屈な空間に体を細長~くして横たわる姿に笑いと涙を誘われる私なのでした。

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こんなんなってます。以前はこの白い柵の外側に寝ていました。

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お尻から見るとこんな感じ・・・

さて、もうひとつの夢の光景と言えば、11カ月を迎えようとしているムスメ、ようやくお座りができるようになりました[emoji:e-420]。とは言ってもまだまだかなりのぐらぐら状態ではありますが、それでも一人でちょこんとベッドに座っている姿はまさしく私にとって夢の光景。感無量です。

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座って遊ぶ姿が新鮮!でもまだ両手で体を支えているので、腕をあげるのはおっかなびっくり。

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大好きなうたの絵本のおかげでお座りの練習ができました。これ、これから子育てする方に絶対お勧めです。ね、Aちゅん?

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クリスマスにもらったプレゼントに囲まれて。

この1ヶ月間ほど体調の良かったムスメの身体能力はメキメキと向上し、その変化には毎日驚かされています。昨日までできなかったことが今日できるようになる神秘。その感動と喜びはきっと子育ての醍醐味なのでしょうが、親になって11カ月目にしてようやく実感することができました[emoji:e-266]。

目の前に椅子を置いてあげると、つかまり立ちもしたいしたいと手を伸ばし、後ろからちょこっと手助けして上げるだけで「えいやっ」と立ちあがるようにもなりました。まだまだ体重が思うように増えず、身長は75センチにもなったのに8キロにも満たない体のため、細くて力もあまりありませんが、それでも新しいことをやりたいという本能がしっかりと働いていることに安心します。

最近では本の好みもはっきりしてきて、嫌いな本を開くと即座に手や足でパタンと閉じます(しかも超無表情で[emoji:e-263])。逆に何冊かある好きな本の中でも特に好きなページがあって、何度も読んで知っている本のくせに、毎回そのページを開くたびに「わ~お」と驚きの表情を浮かべかぶりつきで見入る姿が笑えます。

11カ月目にして初めて猫君の存在を意識するようにもなりました。「猫君どこ?」と聞くと、いつもいる辺りを目で追って探します。猫君もそれを分かってか、割と近くまで平和的に寄ってきてくれるようになりました。つい2,3日前には、ムスメを抱っこしていたダーリンの膝の上にポンと乗っかり、ムスメの横で丸くなり、背中を撫でさせてくれるという非常に大人な態度も見せてくれた彼。だてに歳は取ってません。

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我が家の細長い人

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我が家の細長い

実は今月21日に胃ろうの手術となるはずでした。この手術が成功すれば、お口のカテーテルをはずしてあげて、食事もミルクだけでなく、普通の1歳児が食べられるもの全てフードプロセッサーにかけて胃に直接入れてあげることができるようになったはずで、体重もぐんと増えるだろうと言われていました。

その手術は内視鏡を使った非常に簡単な方法で、30分ほどで終わる予定でした。正午に予定されていた手術に合わせて11時ごろサナトリオに入院し、時間通りに手術室へ連れて行き、ムスメはそこで全身麻酔をかけられました。簡単な手術とは言え手術は手術。数日前から私もダーリンもかなりそわそわして過ごし、当日も手術室からの連絡はまだかと待ちかまえていました。

ところが・・・手術室から呼び出しがかかり、ムスメを迎えに行ったところ、なんと医者から予想外の報告が。

「手術はできずに中止しました」。

・・・・・・・・・・[emoji:e-350]。

説明によると、どうもムスメの大腸は一般的に通っている場所と若干違うところを通っていたようで、胃に向かって針を通そうとしても通らなかったのだそうです。無理に続ければ大腸を傷つけてしまう恐れがあったため、やむなく中止した、と・・・・。

早くお口のカテーテルをとってあげたいと夢にまで見ていた私たちにとって、この報告は全くの想定外。あるはずのない展開でした。しかもこの手術はとっても簡単で失敗はほとんどないとも聞かされていたので尚更です。はじめは医者が冗談を言っているのかと疑ったぐらいで(そんなわけない)、その後呆然自失。でも麻酔から覚めたムスメが大泣きしながら連れられて来て我に返りました、

全身麻酔をかけられたため24時間の入院となり、その晩は私がムスメと病室に残りました。麻酔が覚めた後の気分が悪かっただろうし、お腹にも2針の傷を負ったムスメ。突然眠らされて手術室で一人ぼっちにされた経験も辛かったのでしょう。とにかくナーバスで泣いて泣いて、私の胸から離れたがらず、夜通し私にぎゅ~っとしがみついて眠る姿が本当に可哀想でした。

そして、この結果を受けてムスメの胃ろうは完全な開腹手術となることが決まりました。開腹手術となると、術後に集中治療室に入れなければならない可能性も高く、入院も3~5日と長くなります。成長するに従って、パパやママと離れることが辛くなってきているムスメを、一人集中治療室に送ることは何とか避けたいと思ってきましたが・・・こればかりはどうなるかちょっと分からず、ますます胸が痛みます。

更にその開腹手術、実は明日29日に予定されていたのですが、なんと昨夜からムスメが熱を出し、今回もまた延期となりそうな気配・・・。ああ・・・一体いつになったらカテーテルを外してあげられるのでしょうか。

年内にこの手術が終わり、無事胃ろうが済んで、健常児と同じような食事を胃ろうを通じてさせてあげられるようになり、カテーテルの取れたお口からも少しずつ嚥下の訓練のため食べさせてあげられるようになることが私たちにとっての夢の光景でしたが、この分だとその夢は年を越しそうです[emoji:e-105]。

それでも、一度は生死の境をさまよったムスメが元気に笑って大きく育ち、お座りをしたり新しい遊びを覚えたりする姿に感謝しながら、怒涛の2010年を家族みんなで締めくくりたいと思います。とても苦しく厳しい課題を突き付けられた年ではありましたが、これまでに知らなかった類の深い愛情を学んだ忘れられない1年にもなりました。

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大好きなパパからの電話

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飲み込めませんが、味わうことを覚えさせるため果汁を少しだけあげています。スプーンでもらうのが大人な気分で嬉しいようです。

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大好きなチェリーは指も食われる覚悟であげないといけません[emoji:e-241]

来年はもっともっとムスメが快適に生活できるよう全力を傾けて応援していくと同時に、私自身の生活も少しずつ再構築していきたいと思っています。遠くから励ましてくださった皆さん、本当にありがとうございました。

人としても母としてもまだまだ未熟な私ですが、どうぞ来年もよろしくお願いします。

みなさんもどうぞ良いお年を!!