アルゼンチン暮らしIROIRO

アルゼンチン在住ライターの日々の想いイロイロ

ある幸せな夜のできごと

先週日曜日、我が家のお兄ちゃんことセドリック(8歳)のバレエの発表会がありました。年に何回かある発表会の中でも、この毎年11月に行われるのは市内で一番立派な由緒ある劇場を借り切って、一年の総括を見せる大事な場です。

学校のお友達には内緒にして頑張って続けてきたバレエですが、そこはやはりこの小さな街のこと。クラスメートの女の子がバレエのクラスに入ってきたこともあり、最近では学校でもバレバレ。級友には「オカマ~!」などと言われ、壁にどつかれたりお菓子を取り上げられたりと、アルゼンチンのビリーエリオットを地でやっている様子。

それでもバレエが好きだからいいんだと、あいつらは僕が羨ましいんだと言って胸を張っているわが子(じゃないけど)に常々胸を熱くさせられて来た私。ムスメが生まれて以来一度も見にいけていない発表会に、今年こそ家族そろって行きたいと思っていました。

幸い先日のムスメの手術&入院が思った以上に早く終わったため、日程的には問題なく行けることになりました、が、みんなが心配していたのはムスメの夜間外出。なんと生まれてからこれまでただの一度も夜間に出かけたことがなかったのです。って言うか、ムスメがこうして自由に外に出かけらるようになったのも、思い返せば数ヶ月前からのこと。人が多く集まるような場所にはまだあんまり行ったこともありませんでした。

発表会は夜の8時から(子供の発表会が日曜日の夜っていうのがそもそもアルゼンチン風)。通常8時と言えばムスメのお風呂タイムです。その後ご飯を食べて、ベッドでごろごろしながらママとご本を読んで、9時には就寝。そんな子が8時に劇場なんて大丈夫かな~・・・と若干心配しつつ、ちょっと可愛いワンピースを着せ、頭のでっかい傷(しかもまだ糸もついてる)は黒いレースのヘアーバンドで隠し、いざ出発。

劇場に着いたムスメは・・・大興奮でした。

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劇場入り口にて、神妙なお顔。

最近発覚したのですが、ムスメはどうやらquilombo(日本語でなんて言うんだろう・・。大騒ぎとか大混乱とか?)が大好きなようで、道路工事の大騒音を聞いては大はしゃぎし、道行く大型トラックのがたがた音に大喜びして満面の笑みを浮かべる変わり者。そんなムスメが満場の劇場で大興奮するのも無理はありません。

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場内はこんな感じ。

こじんまりした由緒ある綺麗な劇場です。

今回はピカ(セドリックのお母さん)が気を利かせてボックス席を取ってくれていたので、ダーリン、姑と私とムスメでとっても快適だったのですが、お嬢さんはもう手すりから身を乗り出すわ、ボックス席の出口に掛かっているカーテンを何度もくぐっては喜びの雄たけびは上げるわでノンストップ状態。「ここ好き~?」と尋ねると、首が落っこちちゃうんじゃないかってぐらいブンブンと頷く様子に、私達両親も大満足。

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暗かったし、激しく動くしでピンボケですが・・

しかも、こうして家族そろって夜外に出られたという事実に、私もダーリンも深く深~く感動しました。それはある種の達成感とも言えるでしょうし、私個人としては何とも言えない開放感、とっても自由になった気分を味わいました。

でも、最も幸せだった時間はこの開幕までの待ち時間。いざ挨拶が始まり、踊りが始まると、最初の幾つかの演目こそ大人しく見入っていたムスメですが、ついに眠気に襲われ、でも音がうるさくて眠れずでぐずり出し、ママの胸にへばりついて寝ようとしては目が覚めて泣く、の繰り返しで、ちょうどお兄ちゃんが舞台に出てきた辺りで完全にぶち切れ。やむなく私だけムスメを連れてタクシーで帰宅となりました(もちろんムスメはタクシー内で撃沈)。

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真ん中にいる細い男の子がセドリック。

マッチ棒並みの細さだな。

それでも、やっぱり行って良かった!こうして沢山の経験をムスメにさせてあげたいし、家族が揃って見に行ったことをお兄ちゃんもとっても喜んでくれました。

それと、今回初めてセドリックの学校のお友達も何人か劇場に足を運んでくれているのを見かけました(!)。良かったね、セドリック。こうして一人でも彼のことを理解してくれる人が増えていってくれるといいな、と心から思う母(じゃないけど)だったのでした。