アルゼンチン暮らしIROIRO

アルゼンチン在住ライターの日々の想いイロイロ

初バケーション1 ~出発・入院編~

この夏休み、ムスメ誕生後、初の家族旅行に行ってきました

日程は1月27日〜2月3日の1週間。行き先は私も初めてのコルドバ!!!

コルドバ州と言えば州都のコルドバはアルゼンチン第2の都市。その周辺は高原に囲まれ、山間に広がる小さな町々は保養地として有名。子供達も安心して遊べる清流が流れ、湿気のない涼しい気候もあって、夏には国内外から大勢の人々が避暑に訪れ大変賑わいます。

私たちが住むR市とは第2都市の座を巡ってライバル関係にあるとよく言われるコルドバですが(笑)、R市の人々にとってもコルドバは最もメージャーなバケーションの滞在地。湿度の高いR市の気候に疲れた人々が、夏には大挙してコルドバを目指します。

ムスメの初めてのバケーションを海で過ごすか山ですかが、今回の旅行の最初のテーマでしたが、アルゼンチンのビーチは波が荒く、風も強く、砂浜に座っていても、数分ののちには砂まみれなってしまうことから、気管カニューレをつけているムスメには厳しだろうと思われました。また、湿気のないコルドバはムスメが呼吸するにあたって楽なこと、私もセドリックもコルドバは行ったことがなかったことから、今回は山間の小さな町、サンタ・ロサ・デ・カラムチータへ行くことに決めました。

余談ですが、R市で生まれたかのチェ・ゲバラが、家族でコルドバに引っ越したのも、R市の高温多湿な気候よりも乾燥したコルドバの空気の方が彼の持病の喘息に良いから、という理由だったそうです。

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こんな景色。R市の川の水が茶色(川床が泥だから)にくらべ、コルドバの水はかなり澄んでいます。

さて、荷造りは出発の数日前から始めましたが、いや〜、ムスメの物だけで大型のスーツケース7割方が埋まる荷物!と言うのも、夜間用の特別食、間食用の特別食(全て液体)、吸い取り用のカテーテル、予備の気管カニューレ、胃ろうのセット一式、ガーゼや薬類などなど、いわゆる医薬品や関連する消耗品が多々あったから。これに加えて衣類や水着、タオル類と最小限のおもちゃや本など、まとめてみるとかなりの量でびっくり!特に医薬品は忘れるわけにはいかないので、リストアップしてありましたが、スケジュール帳1ページ分にもなりました。

健常児ならチリ紙で鼻をちーんとかめば済みますが、ムスメの場合は気管カニューレから吸い取りをしてあげないといけないため、吸い取り器は一番の必需品。手動の吸い取り器(お出かけ用)に加え、今回はモーターのついたでっかい吸い取り器(自宅用)も持って行く必要があったため、こちらは手荷物用の小さいスーツケースに入れて座席まで携行することにしました。

こんな大荷物を抱えて初の8時間長距離バスの旅。通常のバケーション前とは異なり、正直私の心はウキウキ!とばかりはいきませんでした。忘れ物はないか、ムスメは長距離バスの旅に耐えられるか、知らない場所での寝泊まりに慣れるかなど、心配事の方が旅への期待感よりもずっと優っていたからです。

何より気になっていたのは長距離バスのあの阿保のようにガンガンきかせる冷房。途上国の長距離バス及び映画館(で冷房がついている場合)ってすべからく恐ろしい寒さですが、あれは一体なんでなんでしょう??「冷房があるからには最大限に活用することが一番のサービス」と勘違いしているのか、単に温度設定が細かくできない不出来なエアコンなのか・・・。お陰でこれまで何度も歯の根が合わないほど凍えて生死の境をさ迷うような経験(←大げさ)をしてきましたが、今回はなにしろムスメが一緒です。この極度の寒さに加え、「座席」なるもので眠れるかどうかも懸念事項でした。

バスの出発時間は日付が変わったばかりの日曜の午前0時45分。現地への到着予定時刻は同日曜の朝8時でした。そこで、出発当日はなるべく早めに昼寝をさせましたが、朝からダーリンに「今日からバケーションだぞお〜〜〜。でっかいバスで行くんだぞ〜〜〜」と鼓舞されていたムスメは興奮状態であまり眠れず。夜も通常通り8時にはお風呂に入れご飯も食べさせ、9時には一旦寝かせようとしたところ、目はギンギンに冴えているし、階下では姑とルーカスまで出発を見送ろうと待ち構えて大騒ぎしてるしで、これまた全く眠れず・・・。

結局、こうして寝ないままいざ家を出て出発か、という段になり、ムスメの顔色がとても悪いことに気がつきました。「この子、吐きそう、、」と私がダーリンに言ったその瞬間、本当にムスメが突然嘔吐(!)[emoji:e-329]。途端に私の心にはさ〜っと暗雲が広がり、これは少々厄介なことになるかもしれない、、という予感がしました。

長距離バスのターミナルには出発時間ギリギリに到着し、間に合うのかと気を揉んでいた私の心配をよそにバスそのものもかなり遅れて到着[emoji:e-281](ここら辺が日本とは違うところ)。ムスメと私は障害者手帳のお陰でバス代は無料な上、2階だてバスの1階、乗ってすぐの快適な最前列に席をもらいました。早速ムスメに防寒具を着せていざ出発したものの、予想通りムスメは何が起こっているのか分からずにぐずつき、慣れない座席で眠れずしきりに態勢を変えては目を覚ましました。時間が経つごとに寒さは骨まで染み入り、夜通し眠れないでいるムスメを抱っこしてあやしたり、冷たい手や顔をなでて暖めてあげたりと寝ずのケアをしました。

こうして、朝8時過ぎにようやくコルドバに到着しました。たった8時間のバス旅。旅が日常の一部だった私にとってはなんてことのない旅のはずだったのに、今回コルドバに着いた時にはもうぐったりでした。かつてはブラジルのボロバスで38時間の旅とか、メキシコからカンクンまで24時間の旅とかへいちゃらでやっていたのに・・・歳ですねぇ(しみじみ)。

朝8時ではホテルに着いてもまだ部屋が空いていなかったので、荷物だけ預けて町を散策しに4人で出かけました。ようやく地上に降りてご機嫌で散歩していたムスメですが、オープンカフェに腰掛け、朝ごはんを食べさせていたところ、なんとここで再び嘔吐・・・!!!こ・れ・は・まずいんじゃないかな、と思った私の予感は的中し[emoji:e-231]、ここからムスメはノンストップで吐きまくることになりました。

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こーんな吊橋渡ったりして順調な滑り出しのはずだったのに・・・。

お昼過ぎには37.8℃の熱も出て、ますますぐずって眠れず。解熱剤を飲ませても吐いてしまうため、ぬるいお風呂に入れて熱を下げようとしましたが、ホテルのシャワールームにはバスタブがなく、子供用のバスタブをお願いしたところとっても小さいタライがあっただけ。ムスメは気官カニューレがついているため頭からざーっとシャワーを浴びせるわけにはいかず、どうしてもバスタブが必要がです。ところがこの見慣れない小さなタライを嫌がって入ってくれず・・・!!

こうして勝手の違う旅先で四苦八苦しながら夕方まで面倒を見ましたが、ムスメの胃はごく少量の水も受け付けず吐き続けたため、脱水症状を懸念して午後6時ごろには病院へ連れて行くことを決めました。村で一つの公立病院の待合室で待つこと1時間近く(病気のツーリストでごったがえしていた)。医師の指示でお尻に吐き気どめのお薬を注射してもらい、脱水症状を起こさないように一晩点滴、その後少しずつ水から与えて、食事が摂れるようになるまでは入院、という予想通りの展開となりました・・・。

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はい、点滴を受けているお嬢さんの図。はぁ~、全国の病院にお世話になっている感じです(汗)。

この晩、ムスメに付き添って病院に泊まった私は、夜中3時ごろから水を与え始め、朝方5時ごろからは胃ろうから食事も与えてみました。ムスメは気持ち良さそうにコンコンと眠り続け、反して私は不眠も2晩目で心身共にかなり疲れていましたが、うとうとしながらも5分おきに液状食を与え続けました。

お日さまが昇ってムスメが目を覚まし、かなり元気な顔でお水を飲みたがったのを見た時はほっとしました。気づけばワタクシ、R市の家を出てから寝てない、着替えてない、シャワーも浴びてない、まともに食べてないの4重苦。「人はこれを”バケーション”と呼ぶのだろうか・・」と何度も自問自答しながら、ひたすら退院してホテルに戻りたいと思いましたが、血液検査の結果が昼過ぎに出るまでは待機と告げられがっくり・・・。お昼に出されたお野菜のスープを美味しそうに飲むムスメを見ている限り、もう大丈夫と思ったんですけどねぇ、、、でもお医者さん的には原因を特定しないことには退院許可は出せませんもんねぇ。

午後1時半ごろに出た検査結果では「何もナシ」。要は環境の変化に対するストレス、知恵熱?みたいなものだったようです。お医者さん曰く、全国からやってくる旅行者の多くがこれで病院にやってくるそう。ムスメも初めてのことの連続で疲れてしまっていたようです。はぁ、これから徐々に経験値を上げていかないと。

くたくたになってホテルに戻った月曜日は雨が降っていたこともあり、午後はホテル内で静養。セドリックには既にお友達が何人かできていて、ホテル内のプールで皆で遊び、ムスメはと言えば「もう充分静養した」とばかりに昼寝もしたがらない回復ぶり(って言うか、だから病気になるんだよっ)。私が疲労でベッドにぶっ倒れて爆睡していた間、ホテルの敷地内をパパとぶらぶら散歩したりして過ごしたようです。

今回宿泊したのは広い敷地内に大中小の3つのプールがあり、その合間を縫って小さな家がくねくねと30件ぐらい軒を連ねているタイプのホテル(って言うのかなぁ)。どの家にもキッチンがついていて自炊もできるため、お客さんも小さな子供連れの家族が圧倒的に多く、歳の近い子供同士が互いの家を行き来しては声を掛け合って遊んでいたりして、とっても良い環境でした。夕方には芝生でマテ茶を飲みながら、他のご家族とも仲良くなって情報交換したり、子供同士を遊ばせたりして、ようやく「夏休み」らしい空気を味わえました。

こうして一日休んだ後、火曜日に遂に川遊びをしに4人で出発したのでした。

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〈続く〉