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アルゼンチン在住ライターの日々の想いイロイロ

ムスメ5歳6月

ムスメ5歳6ヶ月

引き続き冬の南半球からご挨拶申し上げます。とは言え、ここ数日は気温も20度まで上がり、なんだかすっかり春の陽気。久しぶりに窓全開でお日様いっぱいのお部屋で過ごしています。毎年8月には夏日になる日が1日ぐらいあったりします。実際は真冬のはずなのですが。

7月中は2週間の冬休みがあって、学校もリハビリもなくなってしまったムスメを抱え、毎日毎日お友達を招待したりされたり、ショッピングに出掛けたり、子供向け施設に連れて行ったりとイベントを考えるので一苦労でした。日本のように近所にお友達が住んでいないので(学区制じゃないから)、子供同士を遊ばせるのもなかなか面倒です。

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この日は幼稚園から一緒の双子ちゃんが遊びに来てくれました。

そんな冬休み中にムスメが気に入ったことがありました。それは喫茶店でクロワッサンを食べること(笑)。アルゼンチンの最も一般的な朝食メニューがクロワッサンとカフェなんです。ある朝、郵便局に日本からの荷物を受け取りに出かけ、帰りにR市一番の観光スポット”国旗モニュメント”へ行って展望台へ上がったりして、その後、川沿いの喫茶店で一緒にお茶したのがいたく気に入ったよう。

それからは午前中に出かける度に、用が済んだ後は喫茶店へ行くのをせがまれ、すました顔してチンとテーブルにつくムスメがなんだか可笑しくて、ついつい連日のように連れて行ってしまいました。喫茶店でもお行儀良くできるようになったし、以前はこんな風に自由気ままににムスメとやりたいことが出来なかったので、なんだか凄い進歩という気がして、私もすっかり浮かれてしまいました。もう一丁前のお嬢さんですよ〜!

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お陰さまで、7月20日でムスメも5歳6ヶ月となりました。身長は114センチ、体重は17.5キロで1年前より3キロ増えました。でも同い年のお友達はみんな軒並み20キロ超え。まだまだ痩せっぽちのひょろ長ーい女の子です。

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足の細さにご注目!ルパン3世顔負けです。

5歳6ヶ月の記録を残しておきます。

日本から帰ってきて10ヶ月が経ち、日本語を話すことがめっきり減りました。私が日本語で話しかければ、意味はきちんと理解しますが、返事はスペイン語。でもたまに片言の日本語が飛び出して可笑しいこともあります。じいじとばあばと私が日本語の早口でおしゃべりしたりすると付いていけなくて、「今何話したの?」と焦ってスペイン語でツッコミを入れたりするのが可愛らしいです(笑)。それでも今もアンパンマンとちびまるこちゃんは大好き。寝る前は必ずアンパンマンの本を読んでとせがまれますし、Youtubeで毎日ちびまるこちゃんも見ています。

昔からお歌の好きな子ではありましたが、最近では音程も歌詞もしっかりしてきて、本当にずうううっと歌を歌っています。ただしこちらもスペイン語。日本語の歌詞の歌は最近ではあまり聞きませんし、歌いません。

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足組んでる~。余裕のポーズで一丁前にギターリストしています。

アルゼンチン人の歌手で作家でもあったMaria Elena Wolshの歌が大のお気に入りで、長い歌詞も全て覚えていつも口ずさんでいます。彼女の歌は、歌詞が一つの物語になっていて、素敵な世界観を持っているんですが、それが子供にもわかるのかな。こういう物語的な子供向けのお歌って、日本にはない気がするのですが、、、どなたかご存知ですか?

そうそう、ムスメ自作の歌もあって、タイトルは「Mañana no hay escuela (明日学校はない)」。ストライキや教員会議や選挙や祝日でことごとく学校がない日が続く、アルゼンチンの教育現場に捧げる歌です(爆笑)。歌詞の内容は「あした〜学校がない〜。去年は〜あったけど〜、あしたは〜ない〜」です。Byムスメ。本当にしょっちゅう学校ないもんねぇ、、、。大笑いした後に、なんだかちょっぴり切ない気持ちになってしまった母なのでした。

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お風呂に入りたくない~と死んだふり。時折ちら見で見上げるのが笑えます。

最近顕著になってきたことは、ムスメの記憶力の良さです。日本語では1月から12月を覚えるのは簡単ですが、スペイン語では英語と同じく、enero, febrero, marzo, abril, mayo, junio.....と各月に名前がついています。これを何度か繰り返しただけで完璧に覚えてしまったのにはダーリン共々仰天しました。実は月の名前は我が家のセドリック12歳ですらイマイチ怪しくて(特に6月Junioと7月Julioを言い間違える)、お兄ちゃんが言い淀んだところを、ムスメがすらすらと最後まで言ってのけて、家族中大爆笑、お兄ちゃん赤面ということもありました。

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この日は日本から持ってきたプラバルーン(懐かしい!)に夢中でした。これ、アルゼンチンの子供たちにも大反響でした。

12月まで覚えられたのだから、曜日の名前はお手の物です。見ていると、こうして覚えたり学んだりすることが好きな子なのだと思います。最近では夕飯後にパソコンに向かい、自発的に文字を書く練習をしています。鉛筆を持って文字を書くのは手や肘や肩の問題から難しいと本人も自覚しているのでしょう。書くことを覚えたい、でも手書きは難しい=パソコンという選択、を無意識にしているように見えます。

日本語の場合はひらがな、カタカナの50音を覚えなければ文字が書けませんが、逆にそれだけ頑張って覚えてしまえば各文字が音を表してくれるので、難しく考える必要はありません。逆にスペイン語の場合は、5つの母音(a,e,i,o,u)と子音36種類を組み合わせることで音になるため、覚える文字の総数は少ないものの、文字の組み合わせを学ぶ必要性を考えると、少し難しいように思います。

今はまだ自分の名前、お兄ちゃんの名前、パパ、ママ、学校のお友達の名前、「私は⚪️⚪️です」など簡単なことしか書けませんが、文字を組み合わせて音を作る(MとAで「マ」になる)、という構造は理解しつつあり、どんな組み合わせがどんな音になるのかを当てようとするようになりました。文明開化の真っ只中です(笑)。

手書きの文字はと言うと、、、こんな感じです。これでもすっごい進歩ー!!!ムスメの名前をご存知の方は判読も可能かと、、、。まだ小さい文字は書けないとか、一文字ずつの大きさがバラバラとか、色々と課題は山積みですが、とりあえず初めの一歩です。

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「A」がちょっと難しいんですよねぇ。でも簡単な名前をつけておいて良かった、、、。

手書きと言えば、お絵描きもちょっとだけ上手になりました。じゃーん、タイトル「家族」。ちゃんと4人のお顔になってる!!!これに時々もやしのようなひょろりとした体がくっつくこともあります。こちらもまだまだ発展途上です。

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近所のクラブでは最近、高〜い滑り台も一人で登って降りられるようになりました。肘が曲がらずに鎖を握れないため、ブランコには一人で座ってこげませんが、突進して行って、座席に腹ばいになってブラーンブラーンと揺れて遊ぶことはできるようになりました。まあお友達とは違う遊び方だけれども、本人が楽しめる方法を見つけることができたのが何よりです。

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こんな危なかしい滑り台にもぐんぐん登るし、、、、

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更にでっかい滑り台にも一人で登って、こんな風に腹ばいで滑り降りる技も身に着けました!

最新情報としては、うんていを登れるようになったこと。ほんの5段ほどで、頂上には程遠いですが、不自由な腕や手のひらを上手に使って登る姿に、母は勇気をもらった気がします。じーん、、、。

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お友達が登る姿に触発されて登り始めたうんてい。子供同士の影響力ってすごい!

こうして力強く遊べるようになったのも、よく食べてよく寝るからでしょうか。お昼ご飯完食の後、バナナもしっかり食べたりする食欲旺盛な子です。お野菜もなんでも嫌がらずに食べるし、我が家では一番好き嫌いのない人かもしれません。手で持って自分では食べられないけど、オニギリと巻き寿司が大好きで、毎昼食ごとに「おにぎりー」「おすしー」と日本語で催促されて弱ります。

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7年歳の離れたお兄ちゃんには、最近気の強さを発揮しているムスメが喧嘩をふっかけたりする光景も見られるようになりました(誰の血かは言わずもがなです。汗)。セドリックはと言えば、そんなことは一切気にせず、いつもニコニコ。お兄ちゃんとしてびっくりするほど優しくて、これは私が唯一手放しで感心する彼の素敵なところです。

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お兄ちゃんがいる日はつきまとってべったり。

どれだけムスメが彼の部屋を散らかしても、彼のもので遊んでも、彼が宿題をしている横で騒いでも、一度も怒ったことがありません。セドリックがいっつも笑っているので喧嘩にもなりません。ムスメもそんなお兄ちゃんが大好きで、週末に彼が来るのを心待ちにしています。

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あ、またお兄ちゃんに乗っかったりしてるっ!悪がき2人組の図。

日本では腹違いの兄弟が仲良くすることはほとんどないようですが、もう子供を持てない私たちにとって、彼というお兄ちゃんがムスメにいてくれたことは本当に幸運でした。今年はまた日本帰国のために5ヶ月間もの間離れ離れになってしまいます。一緒に日本に行きたがっていたセドリックには可哀想だけれど、家族旅行はムスメの術後まで待ってもらうよう。お土産買ってくるからね!!

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お兄ちゃんが初めてお皿を洗ってくれました。これ一回だけだったけど(笑)。

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その帰国ですが、今年は9月に日本に帰り、アルゼンチンに戻ってくるのは早くて来年の2月の予定です。3月には新学期が始まることもあり、来年度ムスメは果たして1年生に進級できるのか、できたとして、どのような付き添い制度を設けるのかなど、学校側と検討する必要があり、先日会議が持たれました。

この会議には学校長、担任の先生、付き添い、リハビリセンター長、ムスメを担当する各種セラピスト(カウンセラー、言語聴覚訓練士、作業療法士)と私たち両親が参加しました。

ある程度予想していたことではありましたが、真っ先に口を開いた担任の先生と付き添いのアレハンドラからは、ムスメが本当に1年生になれるかどうかの心配点を中心に、ネガティブなコメントが続きました。曰く、集中力がない、注意力散漫である、お友達と遊ぼうとしない(=社会性がない)、活動内容を理解しているのかどうか分からない、活動に興味を示さない、大人(付き添い)とばかり一緒にいようとする、などなど、、、。

聞いていて色々と思うことはありましたが、私からはまず、家庭内では好きで夢中になって遊ぶ遊びがあること、お友達を家に招待すれば仲良く長時間一緒に遊んでいられること、物覚えも良く、学ぶことに熱心で、あまり理解力に疑問を持ったことはないことなどを話し、ムスメに問題があるというよりもむしろ、大きな集団の中で活動することに今だ難しさがあるのではないか、と意見しました。

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学校の外だったら、こんな風にお友達ともちゃんと遊べるんですが、、、。

でも、次にダーリンが言ってくれたことが、最も的確な指摘だったと思います。

「1年前にはムスメが普通校に通えるかどうかすら分からなかった。数年前にはムスメが生き延びられるかどうかも分からなかった。だから今年ムスメが成し遂げたことー普通校に通い、健常児と同じ活動を行い、大きな問題を抱えることなく集団生活に挑戦したことーは我々にとって計り知れないほど大きな飛躍だったことをどうか知っておいてください」

彼のこのコメント聞いて、私は思わず泣きそうになり、担任の先生と付き添いのアレハンドラと学校長も深く頷いていました。そう言われれば、そうなんだって。健常児の5歳児と単純に比べて、あれができない、これをしない、と言うのは多分ムスメにとってフェアな評価ではないのだ、と気がついてくれたようでした。

生まれてから直ぐにママのおっぱいが飲めて、やがてハイハイをしながら世界を探索する旅を始め、1年で立って大地を踏みしめられるようになり、言葉を発して自分の欲求を伝えられるようになる多くの子供達と違って、ムスメには幾つものそんな当たり前の過程が存在しませんでした。ママのおっぱいに吸い付くことはできなかったし、ハイハイもなし。座れるようになったのは1歳。歩けるようになったのは2歳とちょっと。話せるようになったのは実に4歳の後半でした。

そんな風に成長過程が他の子供達と全然違うムスメが今、同い年の子供達と同じクラスで同じ課題に取り組んでいることを、今更ながら奇跡のように思いました。時には私までもそんなムスメのこれまでの闘いを忘れて、もっともっとと多くを要求してしまうところ、ダーリンの言葉を聞いて我に返った気がしました。

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年下のお友達が来れば、お姉ちゃんの顔して面倒を見ようともします。

2歳になる前からムスメを支援してくれているリハビリセンター長はじめ訓練士さんたちは皆、ムスメの過去を知っているだけでなく、様々な障害児者のケースを見ていることもあり、私たち両親を援護してくれました。リハビリではとても積極的で主体的に活動していること、理解力は極めて高いこと、知的な遅れはほとんど見られないこと、先生の指示を聞いても反応しないのは、理解できないのではなくて多分興味がないからでしょう、等々、そして来年以降ムスメが学習する上で、例えばパソコンを使って筆記をさせるというような学習上の工夫が必要ではないかなど、それぞれムスメに対して極めてポジティブな意見を述べてくれました。

結果、学校側も来年はムスメを1年生に進級させることで合意してくれました。ただし、今年のようには付き添いをつけない方向で、です。今回日本で手術を受けることで、気管カニューレを取り外すことができる予定のため、もうカニューレが外れた時の緊急の場合に備えて誰かを付きっ切りにする必要はないだろう、という判断です。

正直に告白すれば、ムスメが一人きりで学校にいる姿を想像するだけで、私としては涙が出るほど心配になってしまいます。でも、これが来年ムスメに課せられた挑戦のようです。鼻が出ても拭けないとか、髪が口に入っても取れないとか、まだまだズボンの上げ下ろしが不自由とか、歩いていてもフラフラ危なかしいムスメが子供達の駆け回る中庭でどつかれて転ばずにいられるだろうかとか、考え出すとキリがないのですが、、、。

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でも今はまだ次の手術のことで頭がいっぱいなので、来年の学校の心配は先延ばしにしておきます。日々色んなことがあって心の整理が追いつかず大変ですが、これまでもそうだったように、一つずつ、一歩ずつです。今はとにかく、祝5歳半!!

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着々と近づく帰国への、諸々の準備についてはまた後日。