アルゼンチン暮らしIROIRO

アルゼンチン在住ライターの日々の想いイロイロ

7年目の再スタート その1. ムスメの誕生会

大変ご無沙汰していました。2月3月と図らずも怒涛の日々となり、今は燃え尽きてやや灰状態になっているアマンダです。そもそも今年の年始に”怖がらない”と誓いを立てたのが事の始まりで、いざ”怖がらず”に新しいことに挑戦し始めてみたら、人生の転機になるようなことが次々と起こって、ついて行くのがやっとの息切れ状態になっていました。

一つは、昨年から悶々と悩んでいたブエノス・アイレスでのお仕事に応募することを決めたこと。このお仕事がもしも決まればブエノスへの引越しを余儀なくされるため、相当期間悩んだ結果、応募してみるだけなら失うものは何もなし、逆にもし応募すらしなかったら生涯悔いが残ると思って履歴書を提出したのが1月20日、ムスメの誕生日のことでした。何となく人生の次なる章の幕開けは、ムスメが生まれてママとして新しい人生のステージが始まった”区切りの日”にすべきかなと思って。私にとって今回の応募は単にお仕事探しというだけでなく、ムスメ誕生後7年を経て、久しぶりに自分自身に向き合って再スタートを切る、そんな意味のあることだったんです。

もう一つは、今年のムスメの誕生日祝いを初めてラテンアメリカ流にやってみようとダーリンと決めたこと。こちらの子供の誕生会は本当に大掛かりで、一大イベントです。収入はわずかでも、何万円もするパーティー会場を借りて何十人も招待して盛大に行うのが割と一般的です。私にとっては大きなカルチャーショックの一つで、そこまでやらなくとも、といつも若干抵抗がありましたが、これまで色んな事情でやってあげらなかったこのパーティを一度ぐらいはやらせてあげようと決めたところ、準備に追われて大変なことになりました(汗)。

そして怒涛の日々だった3つ目の理由は、3月末に開催された2時間の講演会の逐次通訳を引き受けてしまったこと。これまで通訳のお仕事はメディアコーディネートをしていた時のアテンド通訳ぐらいしかやったことがない私が、突然人前で逐次通訳、しかも挨拶やスピーチ程度ではなく2時間の講演会ということで、お話をいただいた時はびびりまくって即お断りしました。講演会は国立大学主催、お仕事は日本大使館からの依頼を友人を介して紹介された格好で、こんな責任の重い大役をノミの心臓の私が引き受けられないと超弱腰だったのですが、友人に何度も説得され、例の私の”年始の誓い”もあり、最終的にこのお仕事を引き受けることを決めた結果、とんでもなく大変な経験をすることとなりました。

それぞれに書きたいことが山ほどあって、ただでさえ毎回長い拙ブログがもう終わりを見ない気がするので(笑)、今回はまずムスメの誕生会の記録にします。

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アルゼンチンでは、と言ってしまうと、他県の事情を知らないのに国の傾向みたいに話してしまうことになるので、私たちの住むR市では、と前置きしておきます。それと、社会格差の激しいこの国では”一般的”という言葉で括るのも実は難しいので、我が家のような中産階級の中程度と限定した上で書きます。

子供の誕生会は日程的に可能であれば誕生日当日に行いますが、ムスメのように3ヶ月の夏休みのちょうどど真ん中が誕生日の場合は、皆んな旅行に行っていて誰も市内に残っていないため、パーティーは日程をずらして行ったりします。我が家も、1月20日の誕生日から1ヶ月過ぎた頃で、お友達がバケーションから帰って来るタイミングを見計らって2月21日にすることにしました。

誕生会準備の最初のステップはテーマを決めること。6歳ぐらいまでだと、アニメや映画のキャラクーをテーマに選ぶことがほとんどで、女の子ならディズニー映画のお姫様とかミニーマウスとかPeppa Pigとか、男の子ならスパイダーマンとかスターウォーズなどが割とメジャーです。このテーマに沿って色々と準備をするので、作りやすいもの、グッズが手に入りやすいものを選んだ方が後々楽です。

7歳ぐらいになるとキャラクターなどは選ばず、女の子なら”美容院”とか”スパ”をテーマにして、お化粧、ヘアセット、マニュキュアなどをするようなパーティーや、ティーパーティーみたいなことをしたり、男の子ならスポーツクラブでサッカーをするなど、内容も変わっていきます。ムスメも7歳なのでもうキャラクターはいらないかとも思いましたが、一度もキャラを使った誕生会をしてあげたことがなかったので、これが最後のチャンスかと思い、ムスメの希望で『アナ雪』パーティーと決めました。アナ雪なら色彩とかはっきりしているので準備しやすくて良かった!

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昨年姉がムスメにプレゼントしてくれたワンピースが偶然アナ雪カラーでちょうど良かった〜。

キャラクターが決まったら会場探しです。パーティーの3ヶ月ぐらい前からサロンのリサーチを始め、2ヶ月前ぐらいには予約を入れます。 春秋ならカントリークラブみたいなオープンエアな場所でする場合も多いですが、ムスメのような真夏&灼熱&湿度90%の時期の子達はエアコンが命綱になるので室内です。ちなみに、友人一家が真夏のカントリーで娘さんのパーティーをやった時は、主催者も招待者も暑さのために危うく命を落としかけ、もう2度と外ではやらないとこぼしていました(笑)。

市内には星の数ほどサロンがあり、それぞれにコンセプトがあって下調べも楽しいものでしたが、ムスメの場合はPeloteroと呼ばれるジャングルジムみたいな遊具がある場所は今回はカット(危ないから)。それと、アンティークな家屋を改装しているサロンだと、室内が小分けになっていて見通しが効かないので、安全上そういうサロンも避けて、ダダーンと広くて見通しのきく空間で、新しくて綺麗で対応もきっちりしていたBig Bangを選びました。

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写真左の床に畳んであるのは空気で膨らませる大型遊具。他にもトランポリンや大型スクリーンがありました。

こうしたサロンでは大抵、料金の中に色々なサービスが含まれています。Big Bangの場合はこんな感じでした↓。

・子供達用のスナックと食事

・子供たちを遊ばせてくれるお姉さん・お兄さんx 2人

・インフラブレ(写真にあった空気で膨らませる大型遊具)

・トランポリン

・大人用のテーブルメイキング

・調理場と調理人x 1人

・ウエイトレス x 1人

・サロン内のデコレーション

・大型スクリーン&音響設備(ディスコになって子供達が踊り狂う)

・幼児用遊具(兄弟や親戚に赤ちゃんがいることが多いため)

・ピニャータ(お菓子が入っている入れ物を天井から吊るしてお菓子の雨を振らせるというメキシコ由来の習慣)。

などなど。

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ピニャータをやろうとしているところ。本場メキシコではありとあらゆる形とデザインの紙製のくす玉が売られていて、それを目隠しした子供達が棒を持ってスイカ割りの要領でバンバン叩いて割り、落ちてきたお菓子などを取り合うといエキサイティングな余興ですが、アルゼンチン版は箱の紐を引っ張るとお菓子が落ちて来るという味気ないもの。メキシコ・ラブな私的にはぜんっぜん納得いきませんが、今回は自力で作る余力が無かったのでアルゼンチン流です。

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子供たちのおやつの時間。定番はポテチとカールみたいなスナック菓子など。2度目の休憩でホットドッグが出ます。

サロンが決まったら、次はお誕生日ケーキです。注文するとかなり高いので、親戚や友人に頼んで作ってもらうケースも多いですが、市内にはお誕生日ケーキを専門に作るお店や職人さんもわんさかいて、需要の高いマーケットであることが分かります。ちなみにこちらでお誕生日ケーキと言えば、フォンダンアイシングでスポンジの周りをガッチリと飾り付けしたものです。中身のスポンジは大して美味しくないし、キャラメールソースがはさまっていたりチョコチップが混ざっていたりるするから辛うじて食べられますが、周囲のフォンダンも全然美味しくない=全体的にちっとも美味しくない、というのが私の評価ですが、生クリームのデコレーションケーキなどを出しても全く一般的ではないため、子供達は食べてくれません。

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今回はお友達に頼んで作ってもらいました。とっても暑い日だったので、移動中にちょっと溶け気味に(汗)。

なぜだろうとずっと疑問に思っていたんですが、これはきっと誕生会のやり方と関係があるのだと、実際にやってみて気がつきました。こうしたお誕生会は大抵3時間コースですが、開始から終了間際のバースディソング合唱&ろうそく吹き消しまで、ケーキはずっと飾り付けの一環として室内に置かれたままなんです。これではフルーツなどの生物はダメになってしまうし、生クリームのデコレーションだと、いくらエアコンが効いていたとしても夏なら溶けてしまいます。だから例の美味しくない、でも溶けたり鮮度が気になったりしないフォンダンアイシングケーキが一般的になったのでしょう。これはアルゼンチンだけじゃなく、こうした形式のパーティーをする西洋諸国では割と一般的なのかもしれません。

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こういう”mesa dulce”(スウィーツ用のテーブル)を用意します。マシュマロは私がせっせと串刺しにしました。

さて、こちらのお誕生会では”Sorpresa”=「”びっくり”の意」と呼ばれるお返しの品が欠かせません。これは来てくれたお友達が帰る際に、招待したその日の主役が一人一人に手渡しする袋で、中身は主にお菓子類と何かちょっとした記念品であることが多いです。最近いただいたSorpresaでは、シャワー用のスポンジ(星型)、小さな手縫いのぬいぐるみ、マウスパッドなどがありました。今回私達が用意したのは、アナ雪に因んだ飾りのついた鉛筆で、ムスメの親友マルーちゃんの叔母さんに手作りしてもらいました。

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左がSorpresaの袋。これも一つずつ手作りで用意しました。そして右が頼んで作ってもらったオラフ、花、雪の結晶が付いた鉛筆。

個人的には、あまりキャラメルなどを食べる習慣のないムスメが、お誕生日ごとにもらってくる袋いっぱいのキャンディーの処分に結構困ってしまうので、用意した袋には小さいパックのフルーツジュース、カップケーキ、鉛筆などを入れ、甘いものは手作りの物を少しだけにしました。ちなみにこのカップケーキは、私のお友達の娘さん(11歳)が作ってくれました。

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左は友人の娘さん作。右はケーキをつくってくれた友人のCからのプレゼント。

さて、残るは当日直前の大仕事、大人用の食事です。会場ではケータリングサービスなども紹介してくれますが、とっても高いので我が家は自前で。まあ”食事”と言っても食文化の貧しいアルゼンチンでは、誕生会で出されるメニューも全然大したものではありません。大人用の定番メニューは、ハム・チーズのサンドイッチ(野菜ナシ)、ピザ、エンパナーダ(ミートパイ)など。子供にはスナック菓子の後にホットドックが出されます。私はこの子供メニューに抵抗があり、もう少し健康的なメニューに変えたいなと思っていましたが、実際のところそのぶん断然手間と費用がかかることが分かり、忙しさにかまけて結局提供されるメニューをそのままお願いすることにしちゃいました。こうやってなし崩し的に”伝統”が続いていくのだなぁと深く納得。

大人25人分の食事に関しても、珍しい物が嫌いな人も多いので基本メニューはそのままで、巻き寿司だけをプラスしました。それでも盛り付けなどは凝りたいと、色々調べて計画を立てていましたが、いざとなるともう全然時間がなくて、思い描いていたことは全く何もできず。私の場合は特に手伝ってくれる家族がここにいないため、私一人で全部用意できるだろうかと途方に暮れていたところ、親友のナタリアが助っ人を買って出てくれました。とは言っても彼女は全く料理をしない人なので、実際には彼女の旦那様(!!)が前夜、とっても美味しいピザとサンドイッチを作ってくれたんですが。エンパナーダと巻き寿司は私が用意し、こうしてなんとか無事に当日を迎えることができました。

パーティー開始前は手分けしてケーキを取りに行ったり、会場に料理やプレゼントを運んだりしてバタバタと慌ただしかったのですが、このBig Bangさんの素晴らしかったところは会場の飾り付けを完璧にしてくれたこと。他の場所では親が飾りも買って会場を作らなければなりませんが、今回は本当に楽させてもらいました。

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会場内ではこうしてお姉さんたちが子供たちを遊ばせてくれます。

さて、予定通り午後6時に開始したパーティーですが、お国柄(地域柄)から6時に到着した招待客はお友達1名のみ。6時半を過ぎる頃からようやく人が増えてお誕生会らしくなりましたが、特に大人の招待客は8時頃にやって来る人もいてびっくり!でもムスメはポロポロと時間差でやって来るお客さんから受け取るプレゼントを開けては喜び、遊びに戻ってはまたはしゃぎで、”自分が主役”の特別な1日を本当に楽しそうに過ごしていて、そんな姿を見られただけで、ああ大変だったけどやって良かったなぁとしみじみ。だから皆んな頑張って毎年やるんだね、と共感できました。

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大好きな訓練士さんのロミーと。お隣は親友のマルーちゃん。お顔のペイントも誕生会の定番です。

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今回やってみた感想は、やっぱり自分のために皆んなが集まってくれて、お祝いをしてくれること、皆んなに想ってもらえて、愛されているのだと感じられる日があるというのはいいな、ということでした。特に、治安上の理由から子供同士が簡単に集まって遊べる日常がないこの国では、”お誕生会”が皆んなで遊べる大事なチャンスになっているんですね。だから逆に、こんなに完璧な会にしなくっても全然いいな、と言うのも同時に感じたことです。私にとっては初めてのことで、遠くに住むダーリンの親戚なども招待したので、それなりに完成された形を目指して頑張りましたが、子供たちにとっては皆んなで集まれて遊べればそれが一番楽しいわけで、来年はもっと砕けたスタイルで遊び重視の会でもいいな〜、なんて、すでに来年もやる気になっている自分がいました。

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ケーキにぶっ刺す花火こと”ベンガラ”。燃えている間に数を数え、その数だけ良いことがあるよって事らしいです。

準備も大変だし、本当に周囲の友人たち(とその娘さんや旦那さんまで)に手伝ってもらって何とかやれたパーティーでしたが、あのムスメの幸せそうな顔が見られるならまた来年も違った形でやってあげたいと、とってもポジティブな気持ちになれた良い経験でした。パーティー後も今日に至るまでしょっちゅう写真を眺めては楽しそうに語っていて、忘れられない思い出になっていたらいいなあと思います。

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もう7歳、まだ7歳。すくすく育って欲しいような、このままでいて欲しいような。

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ところがその晩、、、。

山のようなプレゼントを抱えて夜10時近くに自宅に戻り、大はしゃぎだったムスメが、ベッドに入った途端にまさかの号泣。30分ぐらい激しくしゃくりあげ、泣き止まない。その原因は、翌日に控えた私のブエノスアイレスでの面接試験でした。

次回に続く。