アルゼンチン暮らしIROIRO

アルゼンチン在住ライターの日々の想いイロイロ

マイホーム

ここ3週間ほどネットが使えない環境にいて、またしてもご無沙汰していました。

実は6月20日に引っ越しました。引っ越し先は同じ市内。人生初めてのマイホームです[emoji:e-514]!

P6179030.jpg

引っ越し業者が持ってきたカゴを乗り物に見立てて遊ぶヒトたち。

しかし~引っ越しにカゴですよ!

重ねたら中身はつぶれたり壊れたりするし、カゴそのものが重くて

使いづらいったら!!

昨年後半、ムスメの大手術が終わってから家の購入を考えていました。何しろ毎月の出費の中でも一番大きいのが賃貸料。これを何とかしないことには生活がままならない!という切実な現実があったもので・・・。

そこでばたばたと忙しい中、雑誌、新聞、ネットを見て問い合わせの電話をして、と探し始めました。実際に幾つかの物件を見に行き、中にはかなり気に入った家もありましたが、そんな時に限ってダーリンと喧嘩したり、ムスメが入院したりと上手い具合にタイミングが合わず、購入に至りませんでした。“我が家”に出会うのもきっと縁が必要で、購入に至らないというのは縁がないということ、と友人達にも励まされ、自分にも言い聞かせて家探しを続けること数カ月。

今年1月、偶然開いたサイトで、一目で惹きつけられる物件を見つけました。キッチン・ダイニング・リビングが一つになった広い空間、綺麗に手入れされた木枠の窓やドア、高い天井に木目の美しい梁、そして何よりも魅力的だったのは全ての窓が庭に面して広く開かれていることでした。

この国の都市部の建物は防犯上からか家同士がぴったりとくっついて建っています。つまり両隣の家と壁を共有している訳です。このため、窓は道路に面した壁と、その真反対側、つまり裏庭(パティオ)に面した側にしかつけることができず、一般的に家の中が暗くて換気が悪いのが前から嫌いでした。

こうして、それぞれのブロックの4面にびっしりと家が隙間なく建っているわけですが、実はこうやって家を建てると各ブロックのど真ん中に一軒分の敷地が残ります。そのブロックの真ん中に建てた家をcasa interna unica(内側の一軒家)と呼びます。

この内側の一軒家に入るには、道路に面したドアを開けて30Mほどの細い通路を通って行きます。通常の一軒屋だと道路に面して家の玄関、窓がありますが、内側の一軒屋の場合はこの通路のドアだけが道路からのアクセスになるので防犯上比較的安全と言われています。更に、通りの騒音が届かず、道行く人の視線からも解放されているため、カーテンを常に閉めている必要もなく、前庭に面した窓をガツンと広く空けていてもプライバシーが守られます。

基本的に人気のあるこの内側の一軒屋、各ブロックに1件しか存在しないため(もしくは小さな家が数件入っている場合もあります)なかなか見つからない掘り出し物的な物件でもあります。車を乗り入れる入口が取れないので駐車場が無いのが唯一の難点ですが、元々私達の予算では、街の中心地からさほど遠くない場所で庭付き&駐車場付きの物件には手が届かないと分かっていたので、それなら子供達のために庭優先!と考えていました。

私がこの時ネットで見つけた家はまさにこの内側の一軒屋で、庭の緑と開放的な空気の漂う家の写真に運命を感じたのでした。

P1278024.jpg

この窓はリビングの。

1階にはキッチン&ダイニング&リビングのスペースと寝室、バスルーム、

2階には主寝室と広いテラス、二つ目のバスルームがあります。

実際に家を見に行って分かったことは、大家さんの旦那さんが実は大工さんだったこと。ナルホド、家に足を踏み入れた途端目にするキッチンの作りつけ家具や2階寝室の見事な木の天井の素敵さは、他の物件ではまず目にすることのできないものでした。

20年前に奥さん(大家さん)のご両親が自分達の裏庭に当たるこの土地をプレゼントし、そこに大家さん夫婦が自分たちでデザインして建てた家で、大工の旦那さんは建設の殆どに関わり、木の部分は全て自分で徹底的にこだわって作ったそうです。ここでご夫婦は二人の娘さんを育て、手狭になった今、郊外に別の家を建てて移り住むことを決めたとのこと。でも同時にこの家を手放すことが本当に名残惜しいと言い、思い出話を聞かせてくれた時には涙さえ浮かべていました。

この大家さん夫婦に家の説明や手入れの仕方などを聞き、この家が住み手に心から愛されてきた家だと感じたことが、実は一番の購入の決め手になりました。更に、街の中心地からバスで15分ほどにある閑静な住宅地に建ち、目の前にはスポーツクラブ(サッカー場やバーベキュー場も完備のでっかいクラブ)があるため夜も明るく、スーパーまで1ブロックという立地条件にしては値段がお手頃だったのも高ポイントでした。

さて、こうして決めた家の購入から半年経ってようやく引っ越しとなったわけですが、ここに至るまでの間、実は支払いを巡って鬼のように大変な状況を幾つもかいくぐることとなりました[emoji:e-286]。と言うのも、私の資金は主にアメリカにあったのですが、アルゼンチンへ国外から資金を持ちこむことが極めて難しかったのです[emoji:e-462]。

第1に、持ちこむ資金の透明性を証明しなければならなかったこと(つまり“犯罪によって得たお金ではありません”という証明)。第2に、既に手続きはしているもののアルゼンチン政府側の仕事が遅いため、私には未だアルゼンチン国民が持つ身分証明書がなく、このためアルゼンチン国内に私名義の銀行口座を作れず、通常の銀行間の送金手続きができなかったこと。そして第3に、不動産購入に掛かるアルゼンチンの手続きの複雑さが原因として挙げられます。

もうはっきり言っちゃって、何度頭のネジがぶっ飛ぶぐらい腹立ったか分かりません[emoji:e-269]。どんだけ大変だったか、その詳細を思い出そうとしても記憶障害を起こして思い出せないほど。困難に次ぐ困難で、もしかして神は私にこの家を買うなと言っておられるのか・・・??と何度も断念しかけました。

だってアルゼンチンって社会主義国なん?と思うような無茶苦茶なコントロールがあるんですよ(キューバより酷いんじゃ?と思っちゃうぐらい!)[emoji:e-262]。クリアしなければならない課題と用意しないといけない書類が山のようにあり、それでも正規の方法で全額送金するのは難しいということが土壇場になって分かり(!)、最終的には相当黒い世界にもお世話になって(![emoji:e-350]!)、何とか全額送金→支払いとなったのでした。

支払い&権利書サインの際には、人生初の我が家を購入できた!という喜びよりもむしろ、この煩雑でストレスフルな一切の手続きがこれでよーやく終わった~~~!!!という開放感の方が先に立ったほど。

その後の引っ越しも含めて、起こった全ての(不愉快な、そして理不尽な)ことをここに書こうものなら軽~く数十ページは埋まってしまうので割愛しますが、何事も一筋縄じゃいかない途上国では、マイホーム購入と言う甘く幸せな瞬間までもが地獄と化す、という新鮮な経験をさせてもらいました。ああ、「お客様」として大切に扱われていた日本の生活が懐かしい!!!

こうして何とかこぎつけた新居購入と引っ越し。実は引っ越し直後に再びブエノスへ行かなければならなかったりと相当忙しく、また前の家よりも広い今の家では圧倒的に家具が足りず、未だ段ボールがゴロゴロ転がっている状態ではありますが、それでも朝起きぬけに窓や玄関を開けると庭の木々と土のいい匂いに包まれ、幸せを感じています。

リビングにはムスメが床に座って遊ぶスペースが十分あり、お日様が出れば庭の芝生でも遊べ、そうした環境の改善もあってか、引っ越し以来急にアクティブになったムスメに私の方が驚いています。また、以前は一人遊びが苦手だったセドリックも、朝からさっさと庭に飛び出し、一人でテントを張ったりしては何時間も遊んでいたりして、住環境がもたらす影響力をしみじみ実感。

P7049206.jpg

ムスメ、おもちゃまみれの図。

前の家にはなかったスペース、良かったね~!

P7039171.jpg

玄関先で遊ぶ二人。

道路に面していないから安心です。

特筆すべきは我が家の猫君。近所のぶっとい猫達を前に縄張りを守ろうと必死なのか、はたまた久しぶりのお庭で年甲斐もなく野生の本能がよみがえったのか、しきりにあちこちにマーキングしてくれちゃって、も~おしっこ臭いのなんのって[emoji:e-281]!前の家ではひっそり隠居生活を送っていたのに、急に若返ってくれちゃったのにはびっくりで、これはちょっと早く落ち着いて欲しい感じです。

P7039158.jpg

ムスメに大人しく撫でさせてくれる辺りは大人なんですけどねぇ。

日曜日にはダーリンが庭師となって余計な枝葉を切り落とす横でセドリックがその仕事を手伝い、それを眺めながら私はお茶を飲みつつムスメとテラスでのんびりと空を仰ぐ。家が提供してくれるアクティビティ、家族の時間ってあるんだな~と、庭付きのこの家を買ったことに改めて満足しています。

実際に暮らし始めてみたら水漏れがあったり、湿気による壁のしみがあったり、ゴキブリがわんさか出たり(これが一番怖い・・・)と何かと問題はありますが、何て言ってもこれは私達の家、お金と時間をちょっとずつかけて丁寧に修繕していってあげようと思っています(お金も時間もガツンとはないし・・・)。

今でも十分に素敵な家ですが、私の頭の中にあるイメージではこの家はもっともっと魅力的になるはず。ペンキを塗り変えたり、家具を揃えたり、いつか作ってみたいと密かにもくろんでいるメキシカンタイルを貼ったりしたらきっと、私の理想のザ・ラテンアメリカのコロニアル調の家になるかな~なんて思っています。ああ楽しみ!!