アルゼンチン暮らしIROIRO

アルゼンチン在住ライターの日々の想いイロイロ

草木が教えてくれたこと

こちら南米、ただいま初夏です。

アルゼンチンR市はあまり雨が降りませんが、この週末は珍しく3日連続の雨模様で、空気もひんやりしっとり涼しく、恵みの雨効果で庭の草花がぐんと伸びました。

 

通常、植え替えは暑くなる前に済ませるものと学び、この春にいくつか新しい草花を植えたり、今まで育ちの悪かった物を別の場所に植え替えたりしました。まずはこちらが新しい我が家のお仲間たち↓。

 

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そう、先日セドリックが大奮闘して植え替えを手伝ってくれたやつです。今年の私の誕生日に姑がプレゼントしてくれたもので、数ある種の中でもアルゼンチンでは一番メジャーなジャスミンとのことでした。ふっくらと蕾がついてきて、いつ咲くかいつ咲くかと胸を膨らませていたところ、つい数日前に花を咲かせ始めてあっという間に満開になりました。

 

そのうっとり陶酔しそうな芳香と言ったら・・・!!花のあまりの美しさとかぐわしい香りに、思わず母に映像を見せたところ、「葉っぱの形からしても、それはくちなしじゃない?」と言われました。あれー?ジャスミンって言われたんだけどな、と不思議に思い、ネットで調べてみたら謎が解けました。くちなしとはあくまでも日本名で、別名としてケープジャスミンという名前もついていたんですねぇ。ここら辺がガーディングのビギナーであるワタクシの無知なところ。

 

くちなしにもいくつか種類があって、我が家のニューフェースは八重くちなしという、花びらがダブルでついている種のようです。ナルホド・・・写真で見る普通のくちなしよりもずっとびらびらとゴージャスに見えるわけです。

 

毎朝1階のリビングに下りて窓を開ける度に、庭に満ちたくちなしの芳香がす~っと室内に流れ込んでくるのが、まるで目に見えるかのように感じられます。今朝は母に言われたとおり、一輪だけ切ってテーブルに飾ってみたところ、キッチンも良い匂いに包まれました。ああ、幸せ・・・。

 

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くちなしは初夏に一度だけ咲くそうで、この甘くさわやかな香りの贈り物は、毎年この時期の我が家の風物詩になりそう。日本にいた時はいつも沈丁花と金木犀の時期が待ち遠しかった私ですが、これからは初夏のジャスミンが楽しみになりました。

 

そう、実は今回の植え替え案は正にその「香りある生活」が欲しいというところから生まれました。家族総出で抜いた大きな植物(名前分かりません)は前の大家さんが植えたもので、花も香りもないけれど、小さい我が家の庭のかなり大きなスペースを占めていたため、姑の別荘へお引越ししてもらうことにしたのです。その代わりに植えたのがこのくちなしと、もう一つ別の種類のジャスミンでした↓。

 

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このジャスミンはここではJasmin de Lecha(ミルクジャスミン)と言われていて、生垣などによく使われます。小さい苗を買ったのでまだ枝も一本だけですが、来年にはにょきにょきと沢山の枝が地面から出てくるでしょうし、丈もぐんと伸びるはず。こうして育ったミルクジャスミンは、柳のように下に落ちた枝々に右の写真のような小さな白い花が無数に付き、これまたうっとりするような甘い香りを放ちます。

 

実はお隣さんがこのジャスミンをお庭に持っていて、この春、微風と共に我が家に香りをおすそ分けしてくれたことが植え替えを決意するきっかけになりました(笑)。くちなしもそうですが、ジャスミンは少しお手入れが面倒なイメージがあって、ちょっとだけ躊躇していたのですが、この香りのためにはどれだけ面倒なお手入れだろうとやる価値あり、と実感したというわけです。来年の春ごろには滝のようなミルクジャスミンが見られるといいな~。

 

 

さて、もう一つ今年のニュースと言えば、2年越しのアガパンサスに蕾がついたこと!!!きゃ~!!!!

 

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左が蕾、右が全体像。アガパンサスは南アフリカ原産の背の高い植物で、長い茎の先に薄紫の無数の小さな花でできた丸いぼんぼんが咲きます。なんて、こんな説明で分かるでしょうか(爆)。ネットから写真を引っ張ってこようかとも思いましたが、我が家のアガパンサスが咲いたらそれをサプライズで見て欲しいかもと思うので、しばしお待ちを。

 

2年前にダーリンの叔母さんから譲り受けた苗がちっとも大きくならず、いくら手入れをしても、肥料や水をあげてもずっと”ミニ”アガパンサスか?ってぐらい小さいままだったんですよねぇ。それでも昨年末には弱々しい茎が一本だけ伸びて、先っちょに申し訳程度の花を咲かせたのですが・・・・これを我が家のセドリックのやつが跨いだはずみにぼきっと折っちまいやがってですね・・・・ちょっとした内戦が勃発したのでありました。だって、しかも「知らない、僕じゃない」とか言うんですもん

 

子供に何をされたら狂うかって言ったらコレですね。植物を手荒に扱われること。瞬時に鬼になります、ワタクシは・・・。そんなんで今年のアガパサスの蕾を見て、セドリック本人も「折らないようにしなくちゃ!!」って言っておりました(←やっぱりアンタが折ったんじゃん)。

 

カラーも8月に咲き始めてから3ヶ月間、途切れることなく咲き続けています。一輪一輪の寿命も長いし、次から次への蕾が伸びてきて、6株全てが満開になった時には圧巻でした。

 

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このカラーの背後に育ってきた蔓系植物も、2年前に友人Cに譲ってもらったもの。ここではMadreselvaと呼ばれ、花が咲くと息を呑むほど柔らかな芳香に陶然とします。調べてみたところ、日本名はスイカズラ。ほぉ~。名前だけは聞いたことのある草花たちと、地球の裏側でご対面している気分です。花は咲き始めは乳白色ですが、少し時間がたつと黄色に変わるため、一つの植物に2色の花が咲いているように見えとても綺麗です。

 

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カラーの白と、スイカズラの黄色、その手前にある・・・この紫の花の名前だけがいまだ不明ですが、この色のコンビネーションがたまらなく美しい。日々、地道に水遣りしたり雑草抜いたりして慈しんできた結果が、こうして1年のある時期にまるで絵画のように突然目の前に現れる、これぞ庭仕事の醍醐味ですねぇ。

 

この春には、なんとなく日差しにやられて弱っていたインパチェンス(日本名アフリカホウセンカ)↓もカラーの根元の涼しい日陰に非難させたのですが、その場所がいたく気に入ったようで、久しぶりにゆったりと花びらを広げ育ち始めました。良かった~。

 

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今年はゼラニウム↓の株も増やしました。我が家のゼラニウムはどれも八重咲きですが、八重咲きのものはあまり丈が伸びず、30センチぐらいまでしか育たないのでうちの庭の縁にはピッタリです。本当はもう少し濃いピンクもあるのですが、ちょうど花をつけていなかったのでまたいつか。ちなみに、ゼラニウムって枝をぽきんと追って土に刺しておくだけで増やせるんですね。植えられる場所ができたらやってみよう。

 

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マリーゴールドも昨年の種を採っておいたものを春先に蒔いたところ、順調に目を出して育っています。今年はオレンジと黄色、色ごとに蒔く位置をかえたので、庭のどこにどんな色の花が咲くかがだいたい分かっています。が、果して思惑通りに上手くいくでしょうか。

 

この左の白い花は何でしょう(これ去年も書いたような・・)?ちなみに右のグリーンはオレガノ。ピザのトッピングに欠かせません。

 

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答えは韮の花でした!最近、時間を見つけては餃子だのシュウマイだの肉まんだのを作っている中華フェアーな私のキッチンで大活躍中。

 

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その他の皆さんも元気です。

 

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さて、実は今、一つ迷っていることがあります。それは、この写真の後ろ左手に写っている植物をどうしようかな~と思っていること。

 

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アンティークチェアーの修繕をしていた時に撮ったもの。

 

この、一見椰子の木にも似ている植物、こちらではpapiro falso(偽パピルス)と言いますが、調べてみたら正式名はカヤツリグサ科のシュロガヤツリで、アフリカのマダガスカルが原産だそうです。カヤツリグサ科に代表されるのがあのパピルスですが、このシュロガヤツリの方には特に有効な使われ方はなく、もっぱら観賞用だそうです。ちなみに、この家に引っ越して来た時、既に庭にあった数少ない植木の一つでもあります。

 

形が涼しげで美しかったので、場所だけ変えて今日まで大事に育ててきましたが、ここのところどうしても花のつく植木が欲しいという欲求を無視できなくなってきました。やはり狭い庭(3m×7m)のこと、限られたスペースしかないため、あれもこれもとはいかずに厳選する必要があることに気がつき始めたのです。

 

元来、私はすごくせっかちです。海外に住みはじめてから「オリエンタルな人間は忍耐力があるんだろう?」とよく言われますが、そんなの迷信だ、私の辞書に「忍耐力」はないといつも答えてきたほど、なんでもちゃっちゃとやってしまいたい人間です。でも、そんな私の元にムスメが生まれ、今の庭と出会い、この二つの新しいファクターが私に何か異なる価値観を教えてくれているように思う日々です。

 

毎日1ミリずつ育つ子供と庭の緑に囲まれ、日々少しずつ姿を変えていく彼らに感動をもらい、彼らの育つ速度で景色を眺めたり、物を考えたりするようになって、段々と本当に自分が望むもの、欲しいもの、こうあって欲しいと願うものの姿が明確になってきていることに気がついたのです。

 

庭の植木で言えば、2年前に欲しくてたまらなかったゴクラクチョウ花は、私の庭には大き過ぎると分かったし、うちの庭の日当たり条件を考えるととても植えられる場所がない。それぞれの花が庭のどの場所が好きかも、彼らの育ち方を見ていたら時間と共に分かってきて、位置を買え、様子を観察し、色々と試してみてようやくベストの場所を確保してあげられるようになりました。

 

こうして、それぞれの場所を確保してあげた後に残ったスペースに、何を植えたいか、どんな色の、何月に咲く花がいいのか、どんな花と暮らしを共にしていきたいかを考えて、今はこれから先の庭造りをイメージしているところです。この、ものすごくスローなペースで物事が成ってゆくことが、今の私にはとても心地よく、また心躍るような楽しみにもなっていることが、自分でも驚くほどの変化と言えます。

 

それは、時間をかけてムスメの成長や術後の回復や障害の克服を眺めてきて、その時その時最も適した場所や活動をじっくり考えてあげることとも共通するものがあります。そうして、ムスメの初めての笑声とか、初めてのお口からの食事風景とか、初めての「ワワ(ママ)」とかに感動する・・・ゆっくり進んでいくことも悪くないな、と思い始めたきっかけはここにもあります。

 

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この方もゆっくりのプロフェッショナル。虫好きのムスメはがぶり寄りです(笑)。

 

スローペースと言えば、自宅のリフォームも同様です。購入してから2年と5ヶ月が裁ち経ちましたが、ようやくリビング&キッチンの壁のペンキを塗ったぐらいで、まだ家具も全然足りないし、収まるところに物が収まっていない不便さはあります。

 

でも同時に、家族のそれぞれの生活リズムや使うスペースを眺め、日当たりや暖房のことなんかも考えながら、よりシュミレーションする時間が取れて、最終的にぶれない決断ができている気がします。こうして焦らず、暮らしながらのんびり考えていくやり方は、家具のデザインや置く位置にも具体的なアイデアが反映されているように思うし、納得できるのかもしれません。

 

大量の情報と共に何でも便利に検索できて手に入る日本の暮らしとは違って、ここでは物との出会いも一期一会。急ぎで必要なものがある時にはものすごく不便に感じますが、私の手元に来てくれたモノ達とは”縁”すら感じて愛着が沸く一面もあります。写真のアンティークチェアーなんて、前の借家に大家さんが要らないって残していったものでした(笑)。

 

無理をせず期を待つこと・・・そんな生き方を教えてくれたのは、焦らず常にマイペースで生きる草花とムスメと、そしてラテンアメリカの時間の流れと言えそうです。